AOFUAサマーキャンプ 2023
千葉 倫太郎
AOFUA サマーキャンプに参加して
マレーシアでの AOFUAサマーキャンプではたくさんの体験をし、様々な知見を得ることができた。 慣れない環境に置かれたためか、起きた出来事のひとつひとつがどれも新鮮な感覚で脳内に届いた。 英語を用いてでの交流は異文化理解をするとともに友情と絆を深めることができたとても思い出深い経験だった。
オンラインプログラムを経て
最初2日間のバーチャルプログラムを終えて少し考えさせられた。 「英語でSDGへの理解を深める」という認識でいたため学校の講義を受けるような受動的な心構えでいた。 日本では目にしないような事象が扱われることもあり、他人事のようにすら思いながら聞いていたためあまり深く考えずにその分野のスケールの大きさに惚けていた。 しかしその後のグループワークはそのテーマに挑んで策を生み出すという私の無知な状態では極めて苦しい状況であった。 私がその場で提案したものは凡庸な「技術開発に頼る」というものであったが、他のグループメンバーたちは「マネージメントの改変」や「システムの変革」といった改革的な提案をしていた。 確かに新技術は何でも解決へ導くことができるが、この意識はただの時間任せをしているだけと痛感し、無知な私たちが話し合って探るべきものは現状の最善な効率化なのかもしれないと感じた。
マレーシアに到着して
現地は赤道に近いものの湿度が低かったせいか日本よりも過ごしやすく感じた。 アルファベット表記の言語にはなぜか馴染み深さを感じたが、道の混雑と食べ物の辛さは少し衝撃を覚えた。 地震のない国なだけに超高層がまばらにそびえたつ街の姿は独特で、イスラム建築も木造のマレー建築も混ざり合ったこの国は地理的にも歴史的にも多様なのが日本では見受けられない光景で面白かった。 アメリカは異文化が共存しているとはいえ地域ごとに人種の系統が偏っていた気がしたが、クアラルンプールではどこに行ってもサラダボールのように多様な人々が隣り合って生活しているように感じた。 もしかしたら観光客が多く混ざり合っていただけなのかもしれないが、本当に異文化を地域に溶け込ませるということは社会的に取り込む以上に生活も隣り合わせにして一緒に暮らすということが皆の幸せにつながっているのかもしれないと思った。
日本のもの
ショッピングモールだらけのクアラルンプールのダウンタウンを歩いていると必ず日本の物販品を揃えた店を見かける。 着物やアニメといった世界的に有名なものはやはりマレーシアにもあるのだと気付いた。 寿司屋やラーメン屋も並んでいるので、どこか外国で醤油の味が恋しくなっても日本人は安心していられるのは良いことかもしれない。 一般的に他国の文化として受け取られるものは昔ながらの伝統的なものが多い中で、日本はアニメやロボットといった現代的な文化も外国の方々に印象的であるのはなぜなのだろうと考えることがある。 やはり外国には無い何か独特な価値観が日本で生み出されているということになるが、これはこれで大半が日本人で構成されるこの国の社会だからこそ創り出せているのかもしれない。
人々の温かさ
現地で迎え入れてくれた UTM や MJIIT の方々はとても協力的であり、日本への興味も強かったため積極的に話しかけてもらえる機会が多かった。 そもそもマレーシア人の皆が常にフランクな態度でいるのか、現地の空港でも宿泊先の近くのコンビニでも私が日本人であることに気付いて声をかけてもらうことが多かった。 一緒にプログラムに参加したフィリピンやマレーシアの学生のみんなは学年や学んでいる分野が違っても、先生方と比べると話しやすかった。 敬語という意識がない英語を用いて話すことで日本語よりも本性を出しながら会話している気分でいられたし、趣味が合わなくても違う国に住んでいるというだけで話題が尽きなかった。 違う環境で暮らすことでの意識の違いあるいは共通感覚があることも知れたので、まったくの他人と交流することは学びが多いと改めて気付いた。 さらに、今回のキャンプでは同じ日本人の学生と一緒にいれたこともこの経験をさらに豊かにしたものだと感じている。 自分だけでは気付かない日本との違いや同じ日本人としても感じ方の差があるということを知ることができたのは大事だと思った。
これから
日本には独特な辛いスパイスの食べ物も超高層ビル群もないが、マレーシアと同じく多様な価値観と能力を持っている人々がたくさんいる。 人それぞれの違いに気づき、それを分析して接していくことで初めて知る着眼点があるはずである。 抱えている問題を解決する新しい技術開発に一緒に取り組んでも良いが、まずはその「人」の特徴を見極めてその人の「得意」をうまく利用することが時間任せの技術開発による問題解決をもっと効率的にできるのである。
今回のサマーキャンププログラムを可能にするために尽力いただいた皆様に感謝の意を申し上げます。

地震の少ない国での超高層の迫力は別格